箱根西麓の農業

 箱根西麓の農業


 農業地帯と言えば様々な地域があげられてきました。例えば、「北海道」だったら、じゃがいも・玉ネギ、日本の中央圏で言えば、レタスは長野、キャベツは愛知、人参は千葉・・・等農産地と農作物、セットで言われてきたものであります。では、私たち産地はどうでしょうか。農作物の種類はたくさんあります。産地名を言っても「箱根って温泉でしょ?」と言う始末です。しかし、温泉すなわち観光で栄えているのは、箱根山の東麓であり、西麓では立派な農業を繰り広げてきました。それは、何も誰も力を借りず、自分達の風土と生活を守るために、こじんまりとやってきたものです。



 13世紀前半に火山灰が噴出されたと言われる箱根山。箱根の西側に当たる私たちの土地は、江戸時代後半から開墾されたと言われます。当時はショベルカー・ブルドーザー等、もちろんない時代で行われました。人力をなるべく少なくするためには、そのままの山の傾斜を利用し、山林を伐採して、新たな「畑」というものを作り出してきました。それは私たちの風土と生活を持続していくためであります。
 そのような土地柄は、今でも箱根西麓には残されてきました。そして現在でも、基盤整備が進んできた時代に、わずかながらの傾斜をつけています。なぜだろう?平らなら、機械の導入をし、作業効率をあげるのがいいはずなのに・・・




 利用しやすい土地でも傾斜地にしています。ここで注目するのは、「水はけ」です。今でも硬盤といわれる土の奥深くある硬い部分の土をそのままにしています。箱根山麓の火山灰による土壌は場所によりきりですが、3m位積もっています。その下が硬盤となっています。
 仮に大量の雨が降ったとしましょう。ほかの産地では、明らかに水の逃げ道がないため、水がたまり、作物が水に浸かってしまいます。そんな映像を見たことがあると思われます。
 でも箱根山麓での場合は、雨水に浸かることはまずありません。硬盤が斜面のため、雨水は流れてしまいます。
 しかし、それはそれで問題です。土の中にある栄養分というのは、水に溶けやすく、栄養分と一緒に流れてしまうのが普通です。日本には数多く火山灰土が存在するが、この問題がさけられません。


 ところが、箱根西麓の土は不思議な力を持っています。それは「保肥力」。別名「土の胃袋」と言われ土がいかに栄養分と言われる肥料力を蓄えられるかと言うことです。もし、土にたくさんのたい肥を投与しても、胃袋が小さければ、そのまま残ってしまい、雨が降りさえすれば、その栄養分は流されてなくなってしまいます。その「保肥力」の数値が普通の火山灰土に比べると2倍近く大きいため、肥料分を蓄える力を持っています。これは「関東ローム」の土が混ざっているからです。

 先程も記述した「水はけ」それと「保肥力」。そんな相反する土壌は、日本を隈無く探してもなかなか見あたりません。ただ豪雨により、土が流されてしまう場合があります。それが大変な問題です。



 箱根西麓の農業地帯は海抜100m〜500mあると言われます。一般的に100m違うと平均気温が1℃~0.5℃違うと言われます。また土地柄によって、さまざま変化します。土壌がこれだけいいと言うことも踏まえると、様々な種類の野菜ができると言うことです。

 根を張らせる土を軸に、豊かな温暖な気候、標高の高さならではの寒暖の差、こんな素晴らしい農産地は、今まで注目されなかったところです。「地産地消」となった今、地域にある、身近にある素晴らしいものに目を向けて頂きたいと私たちはそう思います。